膜電位感受性色素を用いた膜電位の超多領域同時測定法を、ショウジョウバエの神経回路網のニューロン活動の解析に適用するため、従来の測定システムの問題点を検討し改良を加えた。 ショウジョウバエの神経系は、神経細胞が小さく、神経線維も細いため、光学的測定システムの二次元空間分解能が問題となる。このため、光学系を改良し、拡大率を増加させるため、高倍率、大開口数の水浸型対物レンズを導入した。これにより、一個のフォトダイオードエレメントが標本上の約3um四方の領域からの光学的シグナルをディテクトすることが可能となり、微小なショウジョウバエ神経系に対しても充分対応可能な空間分解能を得るに至った。 光学系の拡大率を上げることにより、一個のフォトダイオードエレメントが受ける光量は低下し、これにより光学的シグナルのS/N比の低下をきたす。これに対処するために、より高効率の膜電位感受性色素が必要となってくる。このため、新たな膜電位感受性色素の開発のためメロシアニンローダニン系膜電位感受性色素が細胞膜とインターラクションすると思われるアルキル鎖の部分を変えた新しい色素をデザイン、合成し、四種類のすぐれた膜電位感受性色素が得られた。これにより、膜電位感受性色素の選択の幅が大きく拡がり、ショウジョウバエの微小な神経系のニューロン活動をディテクトするための染色条件の設定が容易となった。
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