近交系マウスのB6とBALB/L系統を用いて、H-Y(SDM)抗原の精製に利用するための特異性の高い抗体の調製を検討した。 1.抗体スクリーニングする方法の改良 これまでスクリーニングに用いてきた表皮細胞に対する細胞傷害テストは一応確立された方法であるが、操作が煩雑でかなり長い時間を要する点に問題があった。そこで、2つのELISA法を利用することでこの点を改良した。1つは抗マウス免疫グロブリンを予め結合させたプレートとペルオキシダーゼ標識2次抗体を用いて免疫グロブリン量を測定する方法で、もう1つはポリリジンとグルタールアルデヒドで塩化ポリビニルプレートに固定した精子とペルオキシダーゼ標識2次抗体を利用した方法である。 2.雄マウス細胞で同系統の雌マウスを免疫して作製した抗血清の分画 雄の脾細胞に加えて、H-Y抗原の発現量の多い表皮細胞と精巣細胞で雌を免疫して、抗血清を集めた。各血清を先が硫安分画して免疫グロブリン画分を沈殿させた後、ゲル濾過法で大きくIgMとIgG画分に分けた。IgG画分はプロテインAセファローズを利用して更に精製した。部分的に精製した画分には、どの細胞を用いた場合にも、H-Y抗原以外の抗原に対して産生された抗体の占める割合が大きいことが判明したので、それぞれの画分を更に細かく分ける方法を検討している。 3.H-Y抗原に対するモノクローナル抗体の作製 雄の細胞で免疫した雌マウスの脾細胞とミエローマを細胞融合させ、上述の精子を用いたELISA法によるスクリーニングでモノクローナル抗体を産生しているクローンをすでに分離した。現在、雌雄の胸腺細胞への結合能を比較する方法で特異性についての検討を進めている。
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