本研究課題では、眼球運動の両眼同時的2次元計測法の確立を基礎として、眼球の非共軛的な運動を計測し、3次元空間内での視線の動体を計測可能にすることを目的としている。3次元空間内での眼球運動の計測は、両眼2軸の同時計測を必要とするが、これを実現化するためには、(1)既存のEOG法による同時計測、(2)光学法による両眼同時計測、(3)その他のデバイスによる両眼同時計測、のいずれかの方法を採用しなくてはならない。(1)の方法は精度と安定性に難点があり、(2)の方法は計測サンプリング周波数の不足に問題がややあり、(3)の方法はヒトを被験者とする時に侵襲的方法になり易い傾向がある。またいずれの方法を採用するとしても、高速マルチチャンネルデータ取得にはリアルタイム系の高速プロセッサが不可欠となる。本研究では上記の問題点を遂次解決してゆき、最終的には、小型プロセッサーによる両眼同時の高精度計測を目的としてシステムの構築を行っている。本年度の実績では、中心となるプロセッサーのシステム構築、補助撮影用画像装置の設計製作、計測用アプリケーションソフトウェアーの作成、較正用ユーテリティーの作成等を完了した。データの取得に関しては既設のXYートラッカーの2軸2画面の出力を用いて予備的実験を行った。当年度で使用したオペレーティングシステムは、いづれもリアルタイム系のOS(実時間処理)でありながら複数のタスクをこなし得るために、データの取得と計測系の制御が円滑に行い得た。64年度においては、全体のシステムの調整と細部の手直し、応用アプリケーションの作成、3次元空間内刺激の生成、他の独立した計測法を用いた妥当性の検討、2次元計測、3次元計測の比較等を研究の目標とする。
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