研究概要 |
従来,眼球運動の計測は片眼のみでおこなわれることが一般的であるがその理由は1)両眼が共軛運動を行なうので,片眼の記録で他方の眼球運動を推測することが可能であること,2)両眼の同時測定にかなりの熟練と手間を必要とし,片眼計測とは比較にならないほどの修練を必要とすること等があげられる.しかし,眼球の運動自体には非共軛的な運動(vergence)が含まれており,水平・垂直の共軛的眼球運動との弁別は片眼記録からは行ない得ないことが明らかである.本研究においては,これまで当研究所において蓄積されて来た片眼記録による眼球運動計測・記録の経験をベ-スとして両眼の同時記録装置の開発を試みることを目的とする.本年度は当該試験研究の最終年度にあたるため,これまでの2年間の研究を総括し,システム全体の調整を行ない,実際的な測定の評価を中心に行なった.これまで使用されてきた眼球運動記録法のうちの光学法との比較で妥当性を検討した.また網膜/角膜静電位法(EOG法)との比較も行ない,両眼記録による輻輳方向の両眼加算による3次元方向の記録の妥当性に関して検討を加えた.システム全体を統轄するアプリケ-ションを完成させた.3年間の研究成果報告書を作製した.汎用32bitプロプセッサ-を,デ-タ取得,分析用プロセッサとして使用し両眼の2次元的位置情報の記録をおこなう準備を整えた.32bitであることにより8bit分解能の出力を2点までそれぞれ水平・垂直座標値共に同時に取得することができることを利用して,既設装置を用いてvergenceの計測を試みた.新しく得られた知見としては,1)同じ量の3次元的指標移動であっても周辺視,中心視でvergenceの量がかなり違うことが確認されたこと,2)それが測定上の非線型性によるのか,あるいは眼球運動の調節機能の非線型性特性によるのか今後検討しなければならないものと考えられる.
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