本研究の目的は一次元導体の典型物質である3セレン化ニオブについて、残留抵抗比の大きな結晶を試作し、高純停結晶内での電荷密度波のダイナミックスの研究に供することである。原材料の吟味、気相成長に用いる石英封管の清浄化に注意していくつかの試みを行った。原材料の金属ニオブは純度99.9997%(主な不純物タンタルが約10ppm)のものを使用した。酸素濃度を減少させるため、0.2-0.4mmの厚さのものを予め高真空でアウトガスを行った。セレンは純度99.9999%のものを使用した。封管に用いる石英管には、不純物のFeやCuの少ないものを選んだ。使用に先立って、高温で1日以上のアウトガスを行った。材料の真空封入のため、この補助金により、タ-ボ分子ポンプを用いた真空装置を作った。ベアリングに磁気浮上を使った完全にオイルフリ-のタ-ボポンプと現有のクライオポンプを使用した。ポンプとチャンバの間のバルブには開放時のコンダクタンスの大きなものを使った。ならし運転の後、到達真空度はタ-ボポンプのみでは7×10^<-8>torr、クライオポンプを併用して2×10^<-8>torr程度である。気相成長には、温度勾配のある電気炉と温度の均一性一性の高い電気炉を使用した。 成長温度を650-700Cとし、約50Cの温度差の下で成長させると、太さ数十ミクロンの実験に耐える大きさの結晶が得られた。しかし、封管内の原料量を0.01モル以下に保った場合、結晶純度の目安である残留抵抗比は250を越えず、また同一のロットのなかでもその値が100から200と大きなばらつきが見られた。また、同一の結晶でも、その長さに沿って50近いばらつきがあることが判った。これまでの結果では、結晶の純度は使用する石英管の種類によらない。また温度の均一性が高い電気炉を使用した場合は大きな結晶が得られず、成長には適当な温度勾配が必要であることが判った。
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