研究概要 |
本年度は,研究実施計画書にも記したように,高エネルギ-研究所(KEK)のPEN分光器における実験が諸般の事情により行えなかったので,昨年度までに蓄積した実験デ-タのくわしい解析を行ない,これに基ずいて研究のまとめを行った.その際、装置の分解能の評価や、シミュレ-ション計算との比較などもくわしく行い、交差相関法分光法の得失や将来における応用の展望についても検討を行った.その結果,交差相関法を用いた新しい偏極パルス中性子分光法の開発という,本研究の目的はほぼ100%達成されたことを確認した.残念ながら,現時点ではKEKにおけるパルス白色偏極中性子の強度が充分でないために,本研究で開発した分光法を用いて,中性子磁気非弾性散乱の測定において直ちに新しい成果をあげることは困難である.しかしながら,現時点の10倍の中性子強度が得られれば,これが可能となることを,本研究は明かにしている.したがって,近い将来においてその様な新しい偏極中性子ビ-ムが得られた際には,本研究で開発した分光法は直ちに実用的に用いることが可能であろう. 中性子ビ-ムを用いたアナライザ-システムのテスト実験については,日本原子力研究所にある東北大学中性子分光器を用いて行う予定であったが,これを行うことはできなかった.しかし,来年度以降,東北大学の新しい分光器TOPANにおいて,偏極中性子散乱の実験を行う際には,これをアナライザ-として用いることが予定されており,そのために充分な性能を有していることを確認している.
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