研究概要 |
1.銅クラッド・ニオブ線のマイスナ-効果の実験と、2.銅とニオブの多層薄膜の核磁気共鳴の実験をおこなった。 まず、1.においてはFe,Co,Ni,Mnを50〜500ppm含む銅合金を製作し、ニオブ線をクラッドした線材を作成した。これらの試料のマイスナ-効果は、交流法によって、20mk-10Kの範囲で詳しく測定された。Fe,Co,Ni合金においては、Kondo効果によると思われる大きなク-パ-対破壊の効果が観測された。マイスナ-領域を現すパラメ-タ-ρは1K以下で大体T^<-1/2>に比例することが判明した。この事実は、Kondo効果によるスピン反転の確立が、測定範囲で殆ど温度に依存しないことを示している。最近Narikiyo-Fukuyamaは、我々が考えている系でのρの温度依存性を計算した。それによると、Kondo温度T_Kの下で磁気散乱の確率が減少し、ρは急激に回復することが示されている。我々の結果はこの計算結果と矛盾するように思われ、更に考察が必要であることを明らかにした。研究なかばにして^3He-^4He稀釈冷凍機が故障し、実験が完了するに至らなかったので、特に応用に関する研究は引続いておこなっている。 2.銅・ニオブ多層薄膜のNMR 測定装置の改良と核スピン緩和率の測定をおこなった。超伝導近接効果によって銅の中にも超伝導エネルギ-・ギャップが誘起されることを明らかにした。又、1K以下のスピン・格子緩和時間の詳しい測定から、当初の予想通り、銅の中では超伝導電子と常伝導電子が共存していることが判明した。これらは応用上も重要であり、今後の理論的研究が望まれる。
|