研究概要 |
細菌細胞壁成分のリポポリサッカライド(LPS)とβー1,3ーグルカン(BG)を検出・定量する試薬としてはカブトガニ血球細胞ライゼ-トが市販され、リムルステストの名のもとに医療機器の汚染検査にひろく用いられている。リムルステストによる汚染検査法にはグラム陽性菌を検出できないなどの欠点があり、また、将来のリムルステストに対する需要増大にカブトガニの供給が充分対応できるか否かなどの懸念がもたれている。 家蚕幼虫血漿中のフェノ-ル酸化酵素前駆体活性化系(ProPOカスケ-ド)がng/mlオ-ダ-のペプチドグリカン(PG)がやβGにより特異的に引金をひかれることからProPOカスケ-ドがリムルステストを補完する細菌細胞壁成分の微量検出試薬として利用できるかもしれないと考えられた。この可能性を追求し、できれば家蚕幼虫ProPOカスケ-ドを細菌細胞壁の微量検出・定量試薬として市販できる製品を開発することが本研究課題の目標であった。そのためにはまず、家蚕幼虫血液中のProPOカスケ-ドを活性化しない状態で大量に集める方法を確立せねばならなかった。しかし、このための具合の良い方法は多く試みにもかかわらずついに開発することはできなかった。ProPOカスケ-ドを用いてPGやβGを数ピコグラム/mlの濃度で検出・定量することに成功した。また、βG認識タンパクに対する抗体を用いることによりProPOカスケ-ドがPGによってだけ引金をひかれるようにすることができ、今までリムルステストで検出できなかったPGを高感度で特異的に検出することが可能になった。家蚕血漿を細菌細胞壁成分の微量検出・定量試薬として利用するには解決しなければならない多くの問題が残されている。しかし、その有用性を考えるならば、本研究課題に関する研究は今後とも推進されるべきであると思われる。
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