本研究の目的は、今後の光エレクトロニクスに必要なワイド・バンドギャップ半導体超格子材料を評価するための、紫外・青領域の超短パルス・レ-ザ-光源と光子計測分システムを開発することにある。昭和63年度から平成2年度までの3年間で得られた研究成果は、次の通りである。 1.紫外、深紫外領域のピコ秒パルス光を、励起光として分光測定に用いる手法を確立した。これは、非線形光学結晶(βーBaB_2O_4とKTP)を用いて、モ-ド同期YAGレ-ザ-の3次、4次高調波(波長:353、266nm)を、高効率で得る光学システムであり、この装置を完成させた。また、YAGレ-ザ-で同期励起される波長可変色素レ-ザ-の出力光を、βーBaB_2O_4を用いて深紫外の波長可変・2次高調波(280ー310nm)を、高効率で得る手法を確立した。 2.超高速時間分解分光に適した、新しい「3重分光器」を設計し、作製した。この3重分光器は、測定する光パルスの時間幅を広げる原因となる分光器内の光路差を、差分形の光路を採用して打ち消し、10ピコ秒の時間分解能を確保するとともに、高分解分光の行える最終段分光器を組み合わせた3重分光器である。この新分光器と、超高速応答マイクロチャネル・プレ-ト型光電子増倍管を用い、超高速アンプ系で光信号の弁別を行い、単一光子計数法による超高速発光時間分解分光計測法の確立を行った。 3.Cd_xMu_xTeーCdTe超格子を、ホット・ウォ-ル・エピタキシ-法により作製し、開発された超高速時間分解分光システムを用いて、発光の時間変化を測定し、磁気光エレクトロニクス材料として大きな可能性があることを確かめた。また、ZnTeーZnSe超格子の発光の時間特性を測定し、この系に特有のタイプII型超格子の発光機構を明らかにした。さらにZnSeの単結晶と薄膜の、紫外域励起子発光を測定し、その過渡的時間応答を調ベた。
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