がんなど医学の診断用としてアンガーカメラが広く使われている。このカメラは医用としては大体10年を経過すると廃棄されているが、本研究ではこのような医用としては古く役に立たないアンガーカメラを改変して、陽電子消滅用の研究に利用する。本年は静岡市民病院からもらってきたアンガーカメラの改変を行いつつある。 アンガーカメラを横方向および上下方向に駆動できる架台を作製する。アンガーカメラはその動作原理から位置情報はアナログであり、位置精度を向上させるためのX-Y鉛コリメターを前方に置いた。アンガーカメラを改造し、二台の間に同時計測をする回路をつけつつある。これにより陽電子消滅による2本のガンマー線が各々のアンガーカメラのどの位置に入ったかを決めることが出来る。本年及び来年において2台のアンガーカメラの間にコインシデンス回路を組み込む。陽電子消滅法は物質中の電子の運動量分布、すなわち金属においてはフェルミ面を決定する有力な手段である。とくに合金などのランダム系においてはドファース・ファン・アルフェン効果などで測定困難なため威力を発揮する。陽電子消滅法において、今まで伝統的な一次元スリット法が使われてきたが本研究は中古の医用のアンガーカメラ2台を改造して陽電子消滅の時発生する2本のガンマー線を面で受け、ガンマー線の入射位置を2次元的に捕え、2台の間に同時計測を行い、今までとは比較にならないほど(数千倍)の効率で電子の運動量分布測定を行うことができる。これは単に計測速度が速くなるのみでなく、今まで、測定不可能であると思われていた実験が可能になる。また陽電子消滅は結晶欠陥に非常に敏感である。金属中の結晶欠陥測定の方法としてここ15年程度非常に盛んになってきている。この方法が半導体中の結晶欠陥にも敏感なことが最近わかってきた。
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