本研究では、半導体に適用できる光弾性徴少応力測定システムを開発した。このシステムの微少応力測定の基本原理は、研究代表者らが開発した光弾性画像合成法に基づくものであり、赤外光に対しては透明体となる半導体の性質を利用した。 研究開発の主要部分は、大きく2つに分けられる。第1は、赤外光(不可視光)に対する光弾性画像合成法が適用できる光学系を組み立てることであり、第2は、半導体のような極めて脆い材料に対して、応力測定のための感度校正法であった。これは、半導体が光弾性感度が低く、かつ波長の長い赤外光を用いることで、従来法のような縞解析ができないということが、実験によりわかったためである。 第1の光学系の組み立てでは、不可視光に対する光学系の組み立てであることから、試行錯誤を繰り返しながら、光源、各種フィルタ-、レンズ系のノウハウを蓄積し、光源には高出力の白熱電球、フィルタ-には、半導体自身を使うことで、良好な光学系を組み立てることができた。特に、光弾性画像合成法では複数の波長を含む赤外光を用いることで効果が上がることから、上記のような光学系となった。 第2の感度校正に関しては、1/4波長板を原理的に使うことができないため、二重負荷装置を試作し、光弾性感度が既知のエポキシ樹脂で光の位相補正を加えることで、半導体の感度の校正を可能とした。これで得たシリコンウエハ-の光弾性感度は、エポキシ樹脂の1/10であった。 以上のようなシステム開発により、半導体の微少応力測定が可能となった。これを実際の半導体に適用した結果、シリコンウエハ-では約2MPaの残留応力が±0.1MPa以上の精度で測定することができた。また、ガリウムヒ素、ガリウムリンなどの半導体についても、ウエハ-内の残留応力分布を測定することができた。
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