本年度は昨年度において作成を行なった水晶ねじれ振動子を用いた本格的な測定を行った。 まず初めにこの振動子をインピ-ダンスアナライザに接続し、共振周波数変化及び等価回路定数を求め環境液体の粘性を求めた。 測定は常圧下で行い高圧下での測定時に考えられる諸因子の影響についての検討を行った。試料油としては、非極性で粘性の低い炭化水素化合物の中からn-ヘキサン、イソオクタンを、中程度の粘性を持つn-ヘキサデカン、スクアランを、また粘度の高い試料として炭化水素系合成潤滑油である、ポリイソブチレンを用いた。 高圧下において潤滑油の粘性は指数関数的に増大するため、高圧下で粘性を測定するためには、高い粘度まで測定が可能な装置でなければならない。粘度の測定限界を上げるためには、水晶振動子に印加する電圧を上げなければならないが、インピ-ダンスアナライザ-の電圧は低く高粘度の試料の測定はできないことがわかった。そこで、高電圧が印加可能な周波数発生装置と、周波数カウンタ、デジタル電圧計から成るシステムを採用し、測定された共振周波数変化、共振時の等価抵抗値から粘性を求める方法を採用した。ただし、水晶振動子のインピ-ダンスが高いため、直接水晶振動子の等価抵抗を測定することはできない。そこで、二重振動子法を用いた測定器を作成しその適用を検討した。なお、インピ-ダンスアナライザ-を用いた測定では、約1000cPまで測定可能であったが、約100cP以上の高粘度の試料油では、弾性の影響があらわれ、単なる粘性流体ではなく、粘弾性体として扱わなければならないことがわかった。実際に高圧下で測定を行える装置にするには、素子回りをかなり小型にしないとならず、今後の課題となった。
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