研究課題
本年度は、回転部品の軌道面・転動体表面の粗さ・形状推定法を実用化するために残されている課題を解決するために基本診断システムの構築を行った。すなわち、高いレベルの雑音対策、周期ずれの影響対策、固定された軌道輪の推定法の開発を行うためには、いずれも多種多量の回転部品のサンプルを用いて実験的に解決することが必要である。そこで、現在までに理論的に確立した分析方法を高速に処理する基本診断システムに移植した。本システムは(株)ソニー製のエンジニアリングワークステーションNEWSー1850を中心に構成されており、直径20mmのボールベアリングを用いた実験では、傷があるかどうか、および傷があるとすればその傷の種類(外輪に傷がある場合、内輪に傷がある場合、ボールに傷がある場合、研磨が十分でない場合、ゴミが付着している場合)が97.9%の精度で分類することができた。しかし、この値は熟練した検査員の判断結果と比較してもので、検査員の方が間違っている場合も大いに考えられる。なぜならば、検査員は1μm以下の傷は検出できないのに対し、本手法では0.5μm程度の傷も検出できることが光学顕微鏡を用いた検査により確かめられているからである。(光学顕微鏡を用いた検査はベアリングを分解しなければ検査できず、また検査時間及び費用が多くかかるため、実用化は不可能である。)また、従来大型計算機で十数分かかる診断を本システムでは約4秒で行うことができるので、次年度で行う予定の課題を処理するのにほぼ満足できる演算速度を持つことを確かめた。
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