現在、有限幅レイノルズ方程式を解くために用いられている一般的手法は差分法や多要素の有限要素法である。しかし、これらの方法は非線形の微分方程式あるいは複雑な境界形状の問題を解くのに有効な方法であり、多くの計算時間を必要とする。これに対して、レイノルズ方程式は等粘度を仮定すれば線形方程式であり、しかも簡単に解かれる場合が多い。そこで、研究代表者らは既に、ジャーナル軸受の静特性に関して、油膜内発生圧力を直交関数で展開することにより有限幅レイノルズ方程式の解が短い計算時間で求められることを示した。また、準レイノルズ境界条件(圧力終端を直線で近似し、この境界を通過する流体の総流量の連続性を保証するという境界条件)を提案し、この境界条件の下で上記の方法を用いて求められた解がレイノルズ境界条件下の差分法による解と一致することを示した。 本年度は、上記の方法を発展させ、ジャーナル軸受の動特性を解析した。すなわち、油膜内発生圧力を直交関数で展開しレイノルズ方程式を行列形式で表し、ジャーナル軸受のばね係数および減衰係数を求める新しい方法を提案した。続いて適用例として、部分円弧軸受、二溝付真円軸受および3円弧軸受のばね係数、減衰係数を求め、これらをこれまでに発表されているデータと比較した。そして、この方法によれば、従来の差分法などで求めた場合に比べて、非常に短い計算時間(0.1〜0.3s、東京大学大型計算機センターHITAC-M682Hによる)で精度の高い結果を得ることができることを示した。また、ジャーナル軸受のすきま内の流れが乱流になった場合の動特性に関して、上記の方法による理論的展開がほぼ終了し、現在ソフトウェアの開発を行っている。
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