本研究は、超高速動作に適した物理的特性変化が期待される量子細線、量子箱構造などの多次元量子井戸構造の作製技術を開発し、これを超広帯域光通信用デバイスに応用することを目的として行い、以下に述べる成果を得た。 多次元量子井戸構造を用いたレ-ザおよび光スイッチの理論解析を行い、レ-ザの極低しきい値化、光スイッチの小型化・低挿入損失化のための最適構造を理論的に明らかにした。 多次元量子井戸構造作製に必要な極微細加工技術を開発するため、量子薄膜構造に電子ビ-ム露光法と化学エッチングにより極微細加工を行った後、有機金属気相成長法による再成長を行った。この方法により、周期70nm、幅30nm、厚さ10nmのGaInAs/GaIn AsP/InP単層量子細線構造を世界で初めて作製することに成功し、77Kにおいて電流注入による量子細線レ-ザの発振動作を達成した。 多層多次元量子井戸レ-ザのように活性層体積の小さなレ-ザで重大な問題である、活性層界面の影響によるしきい値電流の増加を、埋め込み再成長直前の水素雰囲気での加熱処理とInP極薄保護層の導入により大幅に低減できることを見い出した。この方法により、GaInAs/GaInAsP/InP多層量子薄膜細線レ-ザを作製し、室温発振に成功した。 低加速高真空反応性イオンビ-ムエッチングにより、微細加工においても低損傷で、垂直かつ深いエッチング形状が得られることを示した。これを用いて光スイッチ用多層量子細線構造を作製し、電界印加による屈折率変化が4%と極めて大きく、吸収損失が小さいことを初めて実験的に明らかにし、多次元量子井戸構造が高性能光スイッチに極めて有望であることを実証した。
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