電子素子・回路技術の知識体得のための知的ソフトウェア開発を推進し、本年度は最終年度として電子回路ITS(知的個別教授システム)と設計エキスパ-トシステムの完成を目指した。 電子回路ITSにおいて、KCL(Kyoto Common Lisp)にシステムを移植し、プログラムの簡素化、高速化を図った。また、回路図作成にSunPHIGSを用い、機能の追加と種々のグラフィックスの利用も可能とした。システム構成では各モジュ-ルの独立性を高め、教授モデル、学習者モデルを構築し教育順序の柔軟化を図り、学習者の理解・進度に応じた個別指導を可能とした。知識獲得の簡略化を図り、デ-タ変換プログラムにて、階層構造の教授に関する知識(メタ知識)を表現し、学習者モデルを自動生成することができる。知識ベ-スは電子回路構造知識ベ-スとしてシステムに自動生成させる手法を確立した。 設計エキスパ-トシステムはその完成を目標に、数式処理、数値計算の充実、日本語出力にの実現を図り、更に最適設計を考慮し、数理計画法、ファジィ集合論の導入を試みた。新たに数式処理機能として、関数の特定変数に対する代入式への自動変形機能を付加し、ル-ル表現がわかりやすく、設計者の負担を軽減した。数値処理機能として、関数の目標値を満足する変数値の決定機能や、関数の最大値を求める機能を付加した。また、C言語で記述した日本語のソ-スプログラムをフィルタを通してコンパイルする事により、正確な日本語の出力が可能となった。更に、回路定数の最適化法として、複数の要求仕様で、かつ仕様間にトレ-ドオフが存在する場合の問題解決を目指し、各要求仕様を満足度で表現し、回路パラメ-タに対する満足度を含んだ回路特性の拡張ファジィ集合のファジィ決定により、各回路パラメ-タ値の次元で回路特性相互における複雑な依存関係を定性的評価し、最適決定することができた。
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