CTやMRI等の脳の断層像上に表示された腫瘍等の病巣に正確に到達するためには、複数の平面像から立体位置を割り出し、実際に手術を行っている部位、もしくは開頭を行う部位との相対位置関係を正確に把握する必要がある。本研究では、ベッド上に固定された多関節ア-ム先端によって手術中の患者の頭部をアクセスすることにより、その空間位置を読み取り、コンピュ-タによる座標変換の後、CT画像に重畳されたマ-カとしてCRT上にオンラインするシステムを構成し、その実用上の問題点を工学的ならびに医学的に検討することを目的としている。前年度は位置精度低下の主たる原因であるア-ムの機械的なたわみや、ポテンシオメ-タの非直線性などの改良を進め、ソフトウェア面では手術中の頭部固定治具のゆるみなどで生じる頭部位置ズレを補正する方法などについて検討したが、本年度は、昨年度提案したNavigation実行時のズレ補正アルゴリズムにもとずいて作動するプログラムをC言語を用いて作成し、その動作確認を行った。 また、本ナビゲ-ションシステムでは当初、CT画像をCRT上に表示するのに、6枚の画像を平面像のままで縮小し、1枚のCRT画面上に配置する方法のみを採用していたが、初心者に対する教育を行う場合や、手術に先だって開頭のシミュレ-ションを行うなどの場合には、より立体感の出る表示方法が求められていた。そこで本年度はCT画像から得られた主として骨の位置を補問法を用いて縦方向にも連続的な像として構成し、疑似3次元表示を行うソフトウェアを試作し、その臨床的価値を確認した。現段階では演算にやや時間を要するため、実時間処理にはやや難点があるが、今後CPUの能力向上により、十分実用化されうるものであるとの結論を得た。
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