1.従来、擬似動的試験で問題とされてきたアクチュエ-タ制御上のアンダ-シュ-ト誤差は、変位の許容誤差を可能な限り小さくするとともに、目的変位に到達させる変位増分を等比級数的に減少させるアルゴリズを採用することにより、無視する程度にすることが出来る。 2.擬似動的試験では、ある変位における復元力を測定し次ステップの目的変位を計算するため、載荷が断続的にならざるを得ず、このために生ずる荷重低下によって復元力が小さく評価され、誤差を生ずる。これを防ぐため、荷重低下を補正することが必要となる。この補正は、大きさは比較的少ないが、ほぼ載荷の全ステップにわたって行うことが必要である。 3.擬似動的試験では、載荷が静的におこなわれるため、ひずみ速度効果が無視され、復元力が小さく評価されることがある。ひずみ速度効果が現れる回数は極めて小さいが、これによる影響は相当に大きいので、正しい結果を得るためには、これに対する補正も必要である。 4.以上の成果を考慮に入れた擬似動的試験システムを開発した。これによれば、地震波のようなランダムな外力の場合、一自由度系の鉄筋コンクリ-ト構造物に対しては、塑性域における応答を正しくシミュレ-ト出来る。スケルトンカ-ブ上での応答が長く続くような外力の場合で、耐力低下が生ずるような大変位領域では、生ずる可能性のある応答はいくつもあるが、本システムによれば、その一つを再現出来る。 5.従って、本研究により擬似動的試験によってRC構造物の耐震性を評価する道が拓かれたといえる。なお、断続載荷およびひずみ速度無視に対して必要となる補正量に関しては、今後の検討が必要である。また、本研究で開発された手法を多自由度系の構造物に対して適用出来るようにすることも、今後の検討課題である。
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