研究課題/領域番号 |
63850164
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研究種目 |
試験研究
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
鈴木 喬 山梨大学, 工学部, 教授 (60020385)
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研究分担者 |
田中 龍夫 昭和薬科大学, 教授 (60077518)
後藤 昭二 山梨大学, 発酵化学研究施設, 教授 (00020339)
木野村 暢一 山梨大学, 無機合成研究施設, 助教授 (50029732)
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キーワード | 殺菌 / イオン交換体 / イオン交換膜 / H^+イオン / OH^-イオン / 相乗効果 / 中性撹乱現象 |
研究概要 |
1.イオン交換体系による殺菌 種々のH^+およびOH^-形合成イオン交換体による大腸菌の殺菌効果を検討した結果、単独系では10μm前後の大孔径を有するOH^-形陰イオン交換体には殺菌能力があるが、通常のハイポーラス型イオン交換体にはH^+、OH^-形のいずれの系でもほとんど殺菌効果のない事が判明した。しかしながら、その殺菌力のあるOH^-形陰イオン交換体と殺菌力のほとんどないH^+形陽イオン交換体を混合し、混床系とした場合単独系より10^2〜10^3倍殺菌力が増大するという興味ある結果が得られた。この混床系の結果は塩基であるOH^-イオンと酸であるH^+イオンの相乗効果に起因すると考えられるが、実用的な水処理殺菌剤の開発の可能性を示唆する重要な現象である。なお、H^+、OH^-形以外ではFeO_4^<2->とHPO_4^<2->イオンの混合イオン形陰イオン交換体に大腸菌を殺菌する能力のある事も判明した。 2.イオン交換膜系による殺菌 イオン交換膜電気透析法は、限界電流密度以上の高電流密度領域において透析を行った場合に起こる中性撹乱現象(水が解離して生じたH^+およびOH^-イオンが電流を運ぶようになる現象)を応用したものである。今年度は本法の殺菌効果と中性撹乱現象との関連性および試料水中の溶存電解質が本法の殺菌効果に与える影響等、基礎的な条件の検討を行った。その結果、Na^+、K^+、Mg^<2+>、Ca^<2+>、Cl^-、NO_3^-、HPO_4^<2->等の各種陽、陰両イオンを含むいずれの水溶液系でも限界電流密度(Na^+、Cl^-水溶液系では0.81A・dm^<-2>)を越える電流密度領域から殺菌効果が現われ、その後電流密度の増加と共に顕著な殺菌力(Na^+、Cl^-水溶液系では1.35A・dm^<-2>で無菌状態となる)を示す事が判明した。この殺菌作用は中性撹乱現象の結果イオン交換膜面上に生じた活性なH^+とOH^-イオンが同時に大腸菌を攻撃するためと考えられる。この系は完全な殺菌効果を示すので、塩素殺菌法に代る飲料水の新殺菌法に発展する可能性があり、今後十分検討する予定である。
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