研究概要 |
1.シリカ含有アパタイトによる殺菌 我々が新たに開発した無機系イオン交換体であるシリカ含有アパタイト〔Ca_<10>(PO_4)_<4.2>(SiO_4)_<1.7>(OH)_<0.6>,SiHp〕の水中の大腸菌に対する殺菌効果を種々検討した。その結果,SiHpは前年度に検討したH^+,OH^-形有機イオン交換体より1桁以上の強い殺菌能力を有すること,また大腸菌水溶液に添加直後から生菌率が急激に低下すること等の優れた殺菌特性を示すことが判明した。さらにSiHpは廉価でもあることから活用価値が高いと考える。 2.無機系イオン交換膜電気透析系による殺菌 実験に用いた無機イオン交換膜はイルミナ系セラミック板にアンチモン酸ゾルとシリカエトキシドの混液をゾル-ゲル法により1,3,5,7,10回塗布することによって作製した。作製した無機膜を脱塩室となるIII室の隔膜に使用し,その脱塩室に,大腸菌浮遊液(0.1MーNaCl,10^8cells・ml^<-1>)を流し,種々電流密度を変えて殺菌透析実験を行なった。塗布回数と限界電流密度の関係は,塗布回数が多くなるに従い限界電流密度も低下する傾向にあり,最も低い10回膜では0.96A・dm^<-2>で有機膜の約1/3であった。この結果から無機膜は有機膜に比べ中性攪乱現象を起こし易く,すなわち良好な殺菌効果が期待できる可能性が示唆された。生菌率は塗布回数が増えるに従って急激に低下し,塗布回数が10回の膜を使用した系では生菌率は0%で完全に殺菌されており,著明な殺菌効果が認められた。同一電流密度条件における両系の生菌率を比較すると,0.82A・dm^<-2>ではほぼ同じ生菌率であったが,1.09A・dm^<-2>の条件とすると有機膜系では0.01%の生菌率であったのに対して無機膜系では0%の生菌率であり,同一電流密度条件では無機膜を使用した系の方がはるかに強力な殺菌効果が得られることが明らかとなった。
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