研究概要 |
1.混床系イオン交換体を活用する新殺菌法種々のOH^-形およびH^+形合成イオン交換体の混床系における殺菌作用を検討した結果,塩基であるOH^-イオンと酸であるH^+イオンの相乗作用により,夫々の単独系よりはるかに優れた殺菌作用を示すことが判明した。さらに表面特性がOH^-形イオン交換体に類似していると考えられる活性アルミナ,酸化マグネシウムを主成分とする無機系のOH^-形類似体と大孔径(10μm程度)を有する有機系のOH^-形陰イオン交換樹脂の複合混床系(OH^-〜OH^-系)は前者の(OH^-〜H^+系)混床系を上回る興味ある殺菌効果を示すことも判明した。後者の系は安価でもあるので実用化の可能性が高いと考えられる。2.イオン交換膜電気透析法を活用する新殺菌法イオン交換膜電気透析法は,限界電流密度以上の高電流密度領域において透析を行った場合に起こる中性攪乱現象(水が解離して生じたOH^-およびH^+イオンが電流を運ぶようになる現象)を活用したものである。特筆すべき結果は,耐熱性、耐久性,耐薬品性のあるアンチモン酸系無機陽イオン交換膜の試作に成功したことと,この無機膜を使用した電気透析系は有機膜電気透析系に比べて優れた殺菌効果が認められたことである。すなわち,作製した無機膜を脱塩室の隔膜に使用し,その脱塩室に大腸菌浮遊液(0.1MーNaCl,10^8cells,cm^<-3>)を流し,種々電流密度を変えて殺菌透析実験を行った結果,無機系膜は有機系膜に比較して中性攪乱現象を起こし易く,したがって生成したOH^-とH^+イオンの相乗作用によるより良好な殺菌効果のあることが判明した。また同一電流密度条件における両系の生菌率を比較すると例えば1.09Adm^<-2>の場合,有機膜系では0.01%であるのに対して無機膜系では完全に殺菌され0%であり,無機膜系は実用化につながる優れた殺菌特性を有することが判明した。
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