本研究は、申請者がこれまでに開発してきた有機化合物を加圧下で熱分解することによって、光学的等方性及び光学的異方性の炭素を合成する方法を応用し、有機金属共重合体の合成とその加圧熱分解によって磁性体が高分散し、かつ形態を制御した磁性新炭素材料を製造するための基礎データを得ることを目的としている。 本年度は、加圧熱分解反応装置の設計と試作をまず行ない、小型の熱分解容器を作製した。さらに、モデル有機化合物としてジビニルベンゼンとビニルフェロセン及びコバルトセンの効率的な合成法を検討した。その結果、メタ及びパラジビニルベンゼンをマトリックス用有機化合物とし、合成したビニルフェロセンとコバルトセンの共重合体の合成が触媒を使わず、1000気圧300℃の加圧加熱下で可能となった。このビニルフェロセンとコバルトセンをFe/Co比で2/1になるように調製した共重合体に水を加えて、1250気圧下で700℃までの各温度で加圧熱分解することによって、CoFe_2O_4フェライトが高分散した炭素の合成が可能であることを見出した。 合成したCoFe_2O_4フェライト分散炭素のX線回折線解析、走査電子顕微鏡観察、透過電子顕微鏡観察及び磁性測定の結果、フェライトの安定性は加圧熱分解温度に強く依存し、700℃加熱ではCoOが共存すること、また、このCoOの共存とスピノーダル分解によって飽和磁化値が低下することが明らかになった。炭素マトリックス中に分散しているフェライト粒子は約250〓の単磁区粒子であり、その保磁力は2kOeと従来にない高い値を有していることがわかった。 今後は、この新しいフェライト高分散炭素の形態の制御因子の詳細な検討と、合成したフェライト高分散炭素の25Kからの低温域を含めた帯磁率測定と電磁波吸収能について研究を進める計画である。
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