1.リノ-ル酸を自動酸化することにより、9位及び13位のヒドロペルオキシ体が得られたが、リレノン酸やアラキジン酸など不飽和結合が3以上になると、環状ペルオキシドが副生成した。しかし抗酸化剤などの水素供与体を添加することにより、リノレン酸からは4種類、アラキドン酸からは6種類のヒドロペルオキシドを得た。以上のヒドロペルオキシドは高速液体クロマトグラフィ-により分離精製することができた。 2.リノ-ル酸などの高度不飽和脂肪酸を含むリン脂質、トリグリセリド、コレステロ-ルエステルの自動酸化により、これらのヒドロペルオキシドを合成することができた。しかしその立体異性体の分離は容易ではなかった。 3.健常人の血漿中に約3nμのコレステロ-ルエステルヒドロペルオキシドを検出した。高速液体クロマトグラフィ-の保持時間から、これはコレステロ-ルリノレ-トとコレステロ-ルアラキドネ-ト由来のヒドロペルオキシドと推定された。一方、健常人の血漿中にリン脂質ヒドロベルオキシドを検出することは出来なかった。 4.脂肪酸酸化生成物の超微量分析法(ピコモルレベル)として、モノダンシルカダペリン誘導化法を開発した。これは上記の生体由来の脂質過酸化物の立体異性の同定等に有用であると考えられる。 以上、種々の脂質過酸化物を容易に合成・精製することが可能になり、また脂肪酸については立体特異的な過酸化物を簡単に得ることも可能になった。生体中に脂質過酸化物が非酵素的に生成するかどうかは、老化や成人病のフリ-ラジカル原因説と関連して非常に重要である。本研究で明らかにされた知見がこの問題の解決に役立つことが期待される。
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