研究概要 |
各種のオルトージイソシアノベンゼン類を合成し、先ず、無置換のオルトージイソシアノベンゼンと有機金属化合物の反応を調べたところ茶褐色不溶性の粉末を与えるだけでポリマ-の構造確認さえ出来なかった。次に、4,5ージメチルー1,2ージイソシアノベンゼンについて検討したが同定出来る生成物は得られなかった。さらに、3,4,5,6ーテトラメチルー1,2ージイソシアノベンゼンについて有機亜鉛との反応を行った。ジアルキル亜鉛との反応ではアルキル基と亜鉛の結合間にオルト位の二つのイソシアノ基が連続して挿入し、良好な収率でキノキサリル亜鉛中間体を与えることを見出した。3,4,5,6ーテトラメチルー1,2ージイソシアノベンゼンと有機亜鉛のモル比を変化させてもキノキサリン・ダイマ-まで生長は起ったが、それ以上のオリゴメリゼ-ションには致らなかった。一方、グリニャ-ル試薬との反応では速やかなオリゴメリゼ-ションが進行した。3,4,5,6ーテトラメチル1,2ージイソシアノベンゼンとアルキルマグネシウムブロミドのモル比を3:1〜4:1にして0°〜室温で反応させるとキノキサンの6量体までのオリゴマ-の混合物が生成した。各オリゴマ-を液体クロマトグラフィ-で分離、単離して構造の確認を行った。オリゴマ-の紫外吸収スペクトルで注目すべきはキノキサリン・ダイマ-が示す260nmと280nmの吸収は各々キノキサリン・モノマ-による発色団とキノキサン・ダイマ-による発色団に帰属されるが、トリマ-以上のオリゴマ-についても同じ波長の吸収を示すだけで、長波長側へのシフトは観測されなかった。この事実は上記キノキサリン・オリゴマ-では連続する三つのキノキサリン骨格は同一平面を取りえないことを示すものである。立体障害を避けて主鎖がねじれていると思われる。
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