研究概要 |
多くの微生物は、プラスチックの一種のポリエステルを生合成し、それをエネルギ-貯蔵物質として体内に蓄えている。微生物がつくるポリエステルは、大地や海洋にすむ微生物によって分解されるので、地球の環境と生命を守るバイオプラスチックとして注目されてきた。最近、微生物に与える炭素源を工夫することによって、すぐれた物理的性質と生物分解性をかねそなえた共重合ポリエステルを発酵合成することに成功した。筆者らが発見した新しいタイプの共重合ポリエステルは、3-ヒドロキシブチレ-ト(3HB)と4-ヒドロキシブチレ-ト(4HB)ユニットからなるP(3HB-co-4HB)である。この共重合体は、水素細菌Alcaligenes eutrophusに、炭素源として4-ヒドロキシン酪酸、γ-ブチロラクトン、1,4-ブタンジオ-ル、1,6-ヘキサンジオ-ル、1,8-オクタンジオ-ルなどを与えることによって発酵合成できる。共重合ポリエステルの組成は、これらの炭素源にフルクト-スを加え、その混合割合を変えることによって制御できる。P(3HB-co-4HB)共重合体の最適発酵生産条件は、pH7.5、30℃、DO(O_2濃度)4〜6ppmであることを明らかにした。この共重合ポリエステルは、共重合組成を変えることによって、結晶性の硬いプラスチックから、弾性に富むゴムまで多様な物性を示す素材となる。この素材は、成型性にもすぐれており、ナイロンに匹敵する強い糸や、透明でしなやかなフィルムにも加工できることがわかった。さらに、フィルムを土の中に埋めて分解性を調べたところ、春には6週間で、夏には2週間程度で完全に分解した。このように、新しいバイオポリエステルは、自然界の微生物によって分解される生分解性プラスチックである。
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