研究概要 |
多くの微生物は,プラスチックの一種のポリエステルを生合成し,それをエネルギ-貯蔵物質として体内に蓄えている。微生物のつくるポリエステルは,大地や海洋にすむ微生物によって分解され消化されるために地球の環境と生命を守るバイオプラスチックとして注目されている。筆者らは,いくつかの微生物に与えるエサの炭素源を工夫することによって,すぐれた物性と生分解性とをかねそなえた新しいタイプの共重合ポリエステルを発酵生産することに成功した。さきに筆者らは,水素細菌Alcalrgenes eutrophusに,炭素源として4ーヒドロキシ酪酸,γーブチロラクトン,1.4ーブタンジオ-ル,1.6ーヘキサンジオ-ルなどを与えることによって,3ーヒドロキシブチレ-ト(3HB)と4ーヒドロキシブチレ-ト(4HB)とのユニットからなる共重合ポリエステルP(3HBーcoー4HB)が効率よく発酵生産できることを見い出している。さらに,今回,石油資化菌Pseudomonas oleovoransにハロゲン化アルカン[Cl(CH_2)_7CH_3,F(CH_2)_8CH_3など]を与えると,側鎖末端にClやFをもつ炭素数6〜12の3ーヒドロキシアルカノエ-ト(3HA)を含む共重合ポリエステルP(3HA)が発酵生産できることを見い出した。これらの共重合ポリエステルは,微生物体内に微粒子の形成で蓄積され,その蓄積量は乾燥菌体重量の60〜80%にも達することがわかってきた。微生物の体内に蓄積されたポリエステルは,菌体を各種の酵素や次亜塩素酸で処理することによって,細胞壁が溶解するために,日色微粒子として取り出すことができることを示した。
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