研究概要 |
多くの微生物は、プラスチックの一種のポリエステルを生合成し,それをエネルギ-貯蔵物質として体内に蓄えている。微生物のつくるポリエステルは,大地や海洋にすむ微生物によって分解されるために,地球の環境と生命を守るバイオプラスチックとして注目されている。筆者らは微生物のAlcaligenes eutrophusに与えるエサの炭素源を工夫することによって,すぐれた物理的性質をもつ2種の共重合ポリエステルが効率よく発酵生産することに成功した。A.eutrophusに酪酸と吉草酸を与えることによって,3ーヒドロキシブチレ-ト(3HB)と3ーヒドロキシバリレ-ト(3HV)とのランダム共重合体が発酵生産でき,炭素源組成を変えることによって共重合ポリエステルの組成を制御できることを見いだした。また,A.eutrophusに炭素源として4ーヒドロキシ酪酸,σーブチロラクトン,1,4ーブタンジオ-ル,1,6ーヘキサンジオ-ルなどを与えることによって,3HBと4ーヒドロキシブチレ-ト(4HB)とのユニットからなる新しいタイプの共重合ポリエステルが発酵生産できることを見いだした。これらの共重合ポリエステルは,フィ-ルドバッチ培養器を用いて,炭素源と窒素源との供給比率を調節してA.eutrophusを生産させると,一般培養法によって極めて高い生産効率で合成できることを明らかにした。新しいタイプの共重合ポリエステルは,共重合組成を変えることによって,結晶性の硬いプラスチックから弾性に富むゴムまで多様な物性を示す素材になるこの素材は,成形性にも優れており,ナイロンに匹敵する強い糸や,透明でしなやかなフィルムにも加工できることを示した。バイオポリエステルは,土,汚泥,海水にすむ自然界の微生物によって,モノマ-単位まで分解され,最終的には微生物によって資化されて生体物質や炭酸ガスに転換される生分解性プラスチックであることを実証した。
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