核酸の合成に用いる多孔質ガラスの表面の構造について研究した。ガラス表面に存在するシラノ-ル基、=^^~SiーOH、の表面密度を推定し7〜9μmol・m^<-2>とした。この値はシリカゲルなどについて従来報告されている値の中で小さめのものと一致し、注意深い測定によってこの値か、これよりもやや小さめの値に収斂すべきものであろうと予想される。この値はわれわれ固有のSPG組成についても、従来から用いられているVycor組成に基づくものについてもほぼ同じで、大差ない(研究発表の1)。また、この値はクリストバライトのような類以の結晶について観察される値とも近い(研究発表の5)。このような多孔質ガラスをシランカップリング剤を用いてアミノアルキル化すると2〜3μmol・m^<-2>程のアミノアルキ基が導入されるがこの表面アミノ基密度は立体化学的な観点からするとヌクレオチドの寸法に比べてやや過密に過ぎる。シランカップリング反応の際に、メチルトリメトキシシラン(TMS)などを用いてアミノ基の量を5μmol・m^<-2>程度に制御する必要がある。このほか細孔径やガラス骨格の組成などを最適化することにより高い効率でDNAを合成出来るようになった。これにより遺伝子プロ-ブの合成がより適確になり、より高い重合度のヌクレオチドが合成出来るようになった。 このような担体を蛋白質工学の全体の流れの中で有効に活用する方向で研究を進めるために、土壌から採取した野生株の遺伝子をクロ-ン化してCMCア-ゼ酵素を生産する組み替え体を準備した。今後この技術を組み込んでプラクハイブリダイゼ-ション用のプロ-ブの合成、生産された酵素の固定化、さらには独自のペプチドを担持したアフィニティ-クロマトグラフィ-などへと発展させたい。このことに関しては、重点領域・機能性材料に新計画を申請した。多孔質ガラスを蛋白質工学に広く応用する研究を更に進める。
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