研究概要 |
1.逆相ミセル粒径分布と蛋白質の溶解機構:AOT/イソオクタンを用いた逆相ミセル系において、ミセル粒径分布の定量化、蛋白質のミセル内への可溶化モデルについて検討した。さらにこのモデルに基づき、蛋白質混合物の相互分離について実験的に検討した。 ミセル粒径分布は、ミセル相AOT濃度によらず、水相塩濃度により決まる含水率によって相関できた。また蛋白質のミセル内への溶解特性は、ミセル粒径分布に基づき、界面に吸着した蛋白質が、それより大きいミセルと衝突することによって、可溶化させると仮定する簡単なモデルにより、定量化することができた。またミセルー蛋白質間の静電的な相互作用とミセル粒径分布との関係についても検討した。さらに、このモデルの応用として、Lysozyme、α-Chymotrypsin、BSAの相互分離を行った。 2.逆相ミセル液膜を利用した蛋白質の分離:逆相ミセル-蛋白質間の静電的相互作用、立体的相互作用(立体的排除効果)を利用して、逆相ミセルバルク液膜による、蛋白質の高選択的な分離を行った。蛋白質相互の等電点、表面電荷、分子量等の差に応じて、液膜の両側の二つの水相における、pH,KC1濃度や液膜相の初期含水率を調整し、さらにはアニオン性ないしカチオン性界面活性剤を選択することによって、蛋白質を液膜を経て、一方の水相から回収側水相へ、高選択的に能動輸送することが可能である。蛋白質の変性は、主として回収側の水相において、低塩濃度条件下でAOTとの複合体形成により生じるが、通常の条件では、従来の回分抽出法と比較してはるかに少ない。速度差を利用する液膜分離法やAOT、CTAB両液膜を併用する複合液膜分離法も、蛋白質の分離に有効である。
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