走磁性細菌はその菌体内に50〜100nmのマグネタイトの微粒子(磁性細菌粒子)を合成する。この磁性細菌粒子は単磁区構造で磁気モ-メントが大きく、その周囲がリン脂質を主成分とする有機薄膜で覆われているなどの特性を有しており極めて安定である。一方、リンパ球、マクロファ-ジ、顆粒球などの白血球成分の分離は医療分野において極めて重要であるが、従来法では時間がかかり細胞の機能が低下するなどの問題があるため、簡便で迅速な白血球分離法の開発が切望されている。すでに昨年度までに白血球中のマクロファ-ジや顆粒球に走磁性細菌を取り込ませてリンパ球との磁気分離について検討し、簡便に機能を維持したまま高純度のリンパ球、マクロファ-ジ、顆粒球の獲得が可能であることを示した。本年度は磁性細菌粒子を含有したマクロファ-ジ、顆粒球の診断への応用として、磁性細菌粒子含有マクロファ-ジ、顆粒球のマウスへの導入、導入したマクロファ-ジ、顆粒球の磁気誘導などについて検討した。サマリウムーコバルト磁石を用いてマウスの足に固定し、外部磁場による磁気誘導を調べた結果、外部磁場を与えた足のほうが磁気感受性白血球の蓄積が多くみられた。外部磁場を与えない場合での蓄積量は0.14%ID(injection dose)/gであったのに対し、磁石を固定すると0.26%ID/gに増加した。しかしながら、このとき臓器への磁気感受性白血球の蓄積がみられたことから、投与法および磁気誘導の方法に関して、さらに改善すべき点が残されていると考えられる。以上のように白血球の貧食能を利用することにより、磁性細菌粒子を取り込んだ白血球が磁気感受性になることが示された。さらに、外部磁場を利用することにより磁気感受性白血球の磁気誘導が可能になった。
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