研究概要 |
パンコムギの一系統Salmonに存在する1Bー1R転座染色体と、エギロプス属に存在する半数体誘発細胞質の両方をもつパンコムギ系統では,正常種子から高頻度に半数体が得られるが,これらを染色体培加しても雄性不稔系統しか得られない。そこで本研究では,半数体誘発細胞質としてS^v型細胞質の1つを用い,その存在下で半数体誘発を抑制はしないが,正常な花粉稔性を回復できる遺伝子型,すなわち,<Rfv1 spg>___ーを得るため,2つの研究を実施した。それぞれについて本年度行った研究の概要とその成果は次のとおりである。 (1)EMS処理による<Spg>___ーから<spg>___ーへの突然変異の誘発:EMS処理を行った(S^v)ーChinese Spring(以下,CS)のM2世代の約800系統を花粉親にして(S^v)ーSalmonに交配し,これより得られたF_1種子を各系統5粒ずつ播種してF_1植物を育て,F_2世代種子を収穫するとともに,種子稔性を調査した。(S^v)ーSalmonの一部が正常1B染色体と1Bー1R転座染色体のヘテロ接合体であったため,本研究に無用な正常稔性をもつF1系統が,部分不稔系統に混って分離した。現在,部分不稔系統より採取した種子を逐次播種し,系統別に半数体出現率を調査中である。 (2)既存の1Bー1R転座染色体保持品種における<Rfv1 spg>___ー遺伝子型のスクリ-ニング:1Bー1R転座染色体をもつ18品種の花粉を(S^v)ーCSに3回連続して交配し,B_2世代を得,現在これを裁培中である。また,B1世代植物を各品種ごとに約20個体裁培し,自殖種子稔性を調査するとともに,半数体の出現率を調査した。その結果,本研究の目標である遺伝子型<Rfv1 spg>___ーをもつものが1品種見出された。この遺伝子型を再確認するための研究を現在開始している。
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