研究概要 |
ス-パ-オキシドディスムタ-ゼは生体中に発生する活性酸素の一種であるス-パ-オキシドアニオンラジカルを酸素分子と過酸化水素に変換することで酸素毒を緩和する。この機構でこの酵素は生体を酸素毒から防護している。本研究はこのス-パ-オキシドディスムタ-ゼ遺伝子を人為的に強化することで各種ストレスに耐性を示す作物を育種するための基礎知見を得ようとするものである。 本年度はス-パ-オキシドディスムタ-ゼ遺伝子を単離する目的でcDNAの単離同定を試みた結果、ホウレン草芽生えcDNAライブラリ-より細胞質に存在するSOD1タイプと葉緑体に組み込まれるSOD2タイプの2種類のcDNA配列を得た。両タイプのcDNA構造を解析した結果、両者とも全長鎖ではなかったがSOD2タイプのlambdaSOD7は1,100nt、SOD1タイプのlambdaSOD4は1,400ntのサイズを示した。lambdaSOD4はクロロプラスト型SOD前駆体をコ-ドしていると考えられトランジットペプチド部分が含まれることから、そのアミノ酸配列をコ-ドする塩基配列を余分に含むため、細胞質型のSOD2タイプより長いcDNA構造を示すものと思われる。なお、両cDNAをプロ-ブとして用い、種子発芽期に光処理を行なったホウレンソウ芽生えについて、ノ-ザンブロット法により4時間おきにmRNAの登現量を調べたところ、両タイプとも12時間目に最も高い登現量を示し、光により転写レベルで調節を受けていることが明らかになった。この応答機構はSOD活性を強化した作物における各種ストレスに対するSOD活性の応答を分子レベルで議論するための基準機構として利用可能なことを示した。
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