研究概要 |
本年度は,シイタケの二核菌系から脱二核化した一核性プロトクロ-ン(以後ネオハプロントと称する)の遺伝的形質の安定性を明らかにする目的で,得られたネオハプロントならびにそれらの間で元の二核菌系株と同じ核構成になるように再交配して作成した新生二核菌系株の菌叢形態,アイソザイム像および子実体形成能等を解析した。加えて,マッシュル-ムを含む他の有用な食用きのこ類におけるヘテロカリオンや二核菌系の脱二核化法としてのプロトプラスト培養法の実用性について検討した。得られた研究成果は以下の通りである。 1.シイタケ二核菌系から脱二核化した各々の核型のネオハプロントには,遺伝形質が変異したものも出現するが,菌系生育の良好なネオハプロントの菌叢形態およびアイソザイム像等の諸形質はそれぞれ親の一核菌系のそれらに一致し,継代培養保存したのちもこれら形質は安定していた。さらに,このように親と同じ生物的特性を示したネオハプロントの相互交配で作成した新生二核菌系株の上述のような生物的諸形質ならびに子実体の形態的特徴についても,元の二核菌系との間で差は認められなかったことから,菌系生育の良好なネオハプロントはその遺伝形質を安定的に維持しているものと考えられた。2.本年度新たに供試したブナシメジ,アラゲキクラゲ,ヤナギマツタケ,クリタケならびにマイタケでも,それらの二核菌系はプロトプラスト培養によって容易かつ効率的に脱二核されることがわかった。また,マッシュル-ムにおいても同様に,小径のプロトプラスト再生コロニ-を分離することによって,一般にホモカリオンと推定されているコロニ-に近似のコロニ-を低頻度ながら取得できた。3.既報ならびに以上の結果から,プロトプラスト培養法はきのこ類の従前の脱二核化法より効率的かつ汎用性に優れた手法であると結論された。
|