研究概要 |
従来高等担子菌類二核菌糸体からの構成一核菌糸体(ネオハプロント)の人為的な作出,すなわち脱二核化には,二核菌糸体を顕微解剖する物理的分割と薬剤処理する化学的分割が行われている。しかし,これらの方法は,高度の熟練と多大の時間を要し,しかも適応しうる菌種に限りがあり,さらには二潮菌糸体を構成する2種類のネオハプロントのうち一方のみしか得られない不都合さが多いなどあまり望ましてもではない。本研究では,高等担子菌類における二核菌糸体の効率的かつ汎用性に優れた人為的脱二核化法の確立を目的に,プロトプラスト培養法の応用と実用性につていシイタケ,ヒラタケをはじめとする10種類の有用な食用きのこを用いて検討した。その結果,1)供試した全てのきのこ類二核菌糸体からの効率的なプロトプラストの調製と再生条件を明らかにした。2)これらプロトプラストからの遠心分離による一核性プロトプラストの分画を試みたが,有効な分画条件を見出すには至らなかった。そこで,プロトプラストの培養再生特性に基づくネオハプロトンの効率的取得法の確立をめざしたところ,3)プロトプラストを再生寒天培地で7ー10日間培養したのち,再生コメニ-のなかから小径のコロニ-を選択的に分離培養することによって,マッシュル-ムを除いたいずれの菌種でも30ー95%の頻度でネオハプロントを取得でき,とらには2種類の核型のネオハプロントが出現することが判明した。4)このように二核菌糸体から脱二核化したネオハプロントには,遺伝形質が変異したものも出現するが,菌糸生育の良好なネオパプロントは,菌叢形態やアイソザイム像等の形質について各々の親の一核菌糸体と同じ特性を示することから,その遣伝形質を安定的に維持しているものと考えられた。5)以上の結果から,プロトプラスト培養法は従前の方法より効率的かつ汎用性に優れた高等担子菌類の脱二核化法であると結論された。
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