Bacillus thuringiensisは鱗翅目、双翅目、および鞘翅目昆虫幼虫に致死的毒性を持つプロトキシン蛋白を大量に産生する。本研究ではこの遺伝子を植物体へ導入し害虫耐性の植物を作ること、および毒性蛋白質としての機能を知ることを目的とする。毒性部位を持つトキシン遺伝子をTiプラスミドバイナリ-バクタ-pGA580へクロ-ン化した。これをアグロバクテリウムに導入した後、タバコに感染させカナマイシン抵抗性タバコを選択した。茎葉分化培地、次に発根培地で培養を進め、完全な植物体にまで分化させた。これらの葉よりDNAを抽出し、トキシン遺伝子をプロ-ブとしてサザンハイブリダイゼ-ションを行なったところ遺伝子および転写物の存在が確かめられた。しかし残念ながら生物検定においては毒性は検出されていない。次にプロトキシン蛋白の理解であるが、in vitroで変異を導入し、カルボキシル末端(C)よりアミノ酸一つづつ少ない蛋白に相当する遺伝子を作成し、毒性発揮におけるC末端の重要性を明らかにする。そのうちの数種については変異の導入に成功し、毒性の有無を決めるアミノ酸の差は2残基となった。また毒性に不要とされるC側半分の機能を知るため、この部位を欠損した遺伝子を大腸菌recA遺伝子の強いプロモ-タ-下流につなげ大量の産物を得た。この遺伝子産物は少量生産される時には毒性を持つが、大量の産物は封入体を形成し、アルカリに不溶であり、カイコに対する毒性は無かった。完全長を持つ蛋白はアルカリに可溶であり毒性も存在することから、C側の役割は昆虫幼虫の中腸内においてまず可溶化されるために必要な部位ではないかと思われる。
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