マウスの培養細胞ならびに受精卵へ染色体を介して遺伝子導入を行うための準備段階として以下の実験を行った。 1.染色体の調製と遺伝子マーカーの開発 ニワトリの培養細胞MSB1をチミジン添加によるDNA複製の抑制を2回行うことにより同調培養できることをアフィディコリン感受性の^3HーチミジンのDNAへの取り込み時期を調べることにより確認した。この系にコルセミドを加えて約60%の細胞から分裂中期染色体を得ることができた。次にニワトリの遺伝子マーカーを開発するため卵巣のCDNAライブラリーをスクリーニングして卵巣特異性の高い17クローンを得た。これらのクローンのいくつかを塩基配列決定等により解析した結果、チトクロームPー450c17のcDNAクローンが得られたほかZ染色体由来の配列を含むクローンが確認された(小野裕之他:日本農芸化学会昭和63年度大会(名古屋)発表)。また、これらのcDNAクローンをプローブとしてゲノムDNAライブラリーから対応するコスミドクローンを得て構造解析を行っている。 2.受精卵への遺伝子導入 アデノウイルスのE1A遺伝子を含むプラスミドクローンpSV2gptーgE1Aをマウス受精卵の雄性前核に導入したのち偽妊娠マウスCDー1の輸卵管中に移して14匹のトランスジェニックマウスを得た。これらのマウスならびにそれらを交配して得られた子孫マウスのDNAを分析した結果、導入した遺伝子が順方向に連結してゲノムDNA中に組み込まれたものは安定に存続するが、逆方向に連結して組み込まれたものは不安定で次第に除去されることが分った。また、大腸菌のgpt遺伝子を選抜マーカーとして利用するための予備実験として1組胞期のマウス胞をマイコフェノール酸、キサンチン存在下で培養した。
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