透過膜ー質量分析計による溶液内ガス濃度連続測定装置については次の改良を行ない、高感度化をはかった。 1)質量分析計の真空系を回転ポンプ、拡散ポンプからターボポンプにおきかえ、保守を容易にし、真空度の向上をはかった。 2)試料容器を改良し、反応中に試薬を注入できるように、また、蛍光、吸光度変化もガス濃度変化と同時に測定できるようにグラスファイバーをつけられるようにした。この結果、葉緑体の酸素発生、吸収と密接に関係している反応中心の吸光度変化、蛍光変化を同時に記録することが可能となった。 3)質量分析計からの出力をDMAを介してパーソナルコンピューターにとりこみ解析するためのソフトをつくり、データのとりこみ、解析を容易にした。これによって酸素や窒素などの同位体の濃度変化も1回の測定で可能となった。 以上のように改良された装置を用い、葉緑体の光化学系II膜標品を用いて以下の実験を行った。 光化学系II膜の乾燥標品に水を加え、閃光照射による酸素発生を測定し、乾燥標品の酸素発生系の酸化還元状態について検討した。その結果、最大の酸素発生は6閃光目で見られた。無処理標品では3閃光目で最大の酸素発生を示すので、酸素発生系は見かけ上、乾燥によって3電子還元されることを明かにした。また、乾燥標品に水を加え10閃光照射した後、再び閃光照射すると最大の酸素発生は3閃光目で見られ、無処理標品と同様の酸素発生を示した。 以上の結果と酸素発生系は5つの酸化還元状態(S_0→S_1→S_2→S_3→S_4)をとり、4電子酸化されてS_4酸素を発生することから乾燥標品はS_2にあり、6閃光でS_4まで酸化されて酸素を発生しS_0にもどるモデルを考えた。
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