研究概要 |
S-ラクトイルグルタチオン(S-LG)はメチルグリオキサ-ルとグルタチオンとから、酵素グルオキサラ-ゼ工の作用により合成されるグルタチオンチオ-ルエステルの一種である。昨年度は本化合物の大量調製法を確立する目的で、培養工学的、及び遺伝子工学的手法を用いて、30g/l のS-ラクトイルグルタチオンの生産に成功した。本年度はS-LGの分離、精製条件とその薬理効果について検討を加えた。 1.S-LGの分離、精製条件の確立:反応液中に残存する未反応のグルタチオンとS-LGを分離するため、高速液体クロマトグラフィ-(HPLC)の利用を検討した。即ち、酵素反応液を1%TCAで除タンパクした後、Dowex1×8(ギ酸型)クロマトグラフィ-によりS-LGを分画し、更に分取用逆相HPLC(ウオ-タ-ズ社製μBondsphare 5μC-18 100Å,19x150mmカラム)により精製した。単一ピ-クとして溶出されたS-LG画分はシリカゲル薄層クロマトグラフィ-(Merck社製,Kiesel-qel 60F254)により、単一のニンヒドリン陽性のスポット(Rf値 0.55)を示し、またその融点は128〜130℃で、元素分析等の結果も標準S-LGと同じ値を示した。 2.S-LGの薬理作用:ラット腹腔内から採取した肥満細胞に対するS-LGのヒスタミン遊離抑制作用を調べた結果、S-LGはコンカナバリンA,或いはcompound48/80によるヒスタミン遊離を効果的に抑制した。また、カラギ-ナンにより誘発したラット後肢足蹠浮腫に対して、S-LGは200mg/kg(ラット体重)の濃度で、抑制的に働き、強力な抗炎症作用を有していることを明らかにした。
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