研究概要 |
これまでの研究において、5,6ージクロロインド-ル酢酸(5,6ーCl_2ーIAA)がこれまでに知られているすべてのオ-キシン類の中で最も強いオ-キシン活性を示す事を見いだした。今年度の研究において、5,6ーCl_2ーIAAの植物に対する発根作用は切り口浸漬処理だけでなく、葉に処理した場合にも同様に高い発根促進活性を示す事を見いだした。すなわち、5,6ーCl_2ーIAAメチルエステル溶液(0.5〜5ppm)をインゲン葉部に処理すると発根数は無処理対照区の2から4倍に増加した。また、マングビ-ン葉部処理(10〜100ppm)においては、発根数とエチレン発生量はいずれも処理濃度の上昇に伴い増加し、発根数は対照区の3から4倍に、エチレン発生量は約50倍にも達した。5,6ーCl_2ーIAAメチルエステルの発根数とエチレン発生量はともに、供試したオ-キシン系化合物(ethyclozate,NAA,IBA,IAA,2,4ーD)の中で最も多かった。 Tran Thanh Vanは、1973年、タバコの花こう外植片を用いた組織培養による花芽形成物質の生物検定系を開発した。一方、野間らはタバコの花こうに含まれるインド-ルー3ー酢酸(IAA)の含量をGCーSIMーMS法とAvena屈曲テストにより定量したところ、GCーSIMーMS法では多量のIAAが検出されたにも関わらずAvena屈曲テストでは検出されなかった。彼らは、この定量値の不一致を、アンチオ-キシン活性を有するじテルペンを単離する事により説明した。我々はこの知見を基に、Tran Thanh Vanの開発した花芽形成物質の生物検定系を改良した。すなわち、従来IAAだけを添加していた生物検定系にオ-キシンとともに本研究において新たに創製したアンチオ-キシン、5,7ージクロロインド-ルイソ酪酸を同時に加える系を考案した。この新しく考案した生物検定法は、タバコの短日処理葉から得た滲出物の花芽形成試験において極めて興味ある花芽促進活性を示した。すなわち、切片上に形成された花芽は生成してつぼみとなり、そのつぼみの形態は実際のタバコ植物上に形成されたつぼみと同様であった。このことから、タバコ頂芽における葉芽から花芽の分化誘導にはオ-キシンと共にアンチオ-キシンの存在が重要であることを示した。
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