研究概要 |
1.我々が1983年からin vivoで継代・維持しているクリプトスポリジウム(Cr)のオ-シストの形態学的観察を行い,その分類学的位置づけを検討した。オ-シストは長径5.1〜6.6μm(平均6.0μm),短径4.0〜5.2μm(平均4.5μm),長短径比1.12×1.63(平均1.32μm)であった。この大きさはすでに鶏のCrとして知られているC.meleagridis並びにC.baileyiのオ-シストの大きさの中間である。この大きさの違いのほか,寄生がファブリキウス嚢のほか盲腸にも起こることから,我々のCrは新種である可能性が示唆された。 2.Cr感染に自然免疫が成立するか否かを検討した。すなわち,1週齢の産卵鶏および肉用鶏にオ-シストを感染させ,1週間おきに病理組織学的に観察して感染率を調べた。その結果,産卵鶏の感染率は4,5週齢100%,6週齢40%,7週齢20%で,8週齢以降観察した14週齢までは0%であった。肉用鶏の感染率は,2週齢67%,3週齢83%,4週齢67%,5〜7週齢17%,8週齢以降0%であった。以上の成績から,Cr感染には自然免疫の成立が示唆された。 また,Crの免疫原性を知る目的で感染耐過鶏(初感染後3,4週齢)に3.5×10^6個のオ-シストで攻撃し,その後におけるオ-シストの排泄状況を調べた。その結果,初感染時の接種オ-シスト数が少ない時再攻撃を行ってもオ-シストを排泄しなかった。よって,Crの免疫原性が示唆された。 3.1991年1月,岡山県の1.牧場の子牛(20〜30日齢)にCr感染症が多発した。この発生から3頭を病理組織学的に調べた結果,小腸にCrが濃厚感染していた。この牧場の下痢便からはオ-シストが分離し得た。その形態はC.paruumに酷似していた。
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