1)ヒト14K型及びニワトリ16K型レクチンについて、遺伝子組替え技術により、大腸菌にて発現させることが可能になった。これにより、基礎及び応用のさまざまな研究において、充分な量の蛋白質を実験に供せられるようになった。 2)ヒト14Kレクチンのアミノ酸を、部位特異的突然変異の手法により置換することができるようになった。これにより、レクチン機能に関わるアミノ酸の検索が可能になった。この結果、例えば従来は糖結合活性に必須と考えられてきた1個のトリプトファン及びいくつかのシステインが、本質的な重要性を持たず、むしろアルギニン及びヒスチジンが必須であることなどが判明した。 3)ニワトリの14Kと16Kの2つのイソレクチンの役割分担については未知な点が多いが、特異的抗体及びDNAプロ-ブを用いて、胚発生に伴うこれらレクチンのmRNAの転写と、蛋白質の発現を、時期及び臓器別に詳細に検討した。結果は複雑で、まだ首尾一環して解釈できる段階ではないが、発生の早い段階では16Kが働き、より遅い段階で14Kが働く傾向がみられた。 4)ヒト高分子型のレクチンである29Kレクチンについて、cDNAのクロ-ニングに成功し、全一次構造が解明された。これは、14K型の2倍の分子量を持つが、C末端型の半分が14K型と高い相同性を示し、N末端側は全く関係のない構造をしていた。以上のような14K型及び29K型の一次構造研究を総合することにより、このレクチンファミリ-の分子進化を解明することができた。 5)ある種の蛇毒にβーガラクトシド結合性レクチンが存在することが知られていたが、我々が従来から研究してきたレクチン(カルシウム非依存性)と関連があるのかどうか明かでなかった。ガラガラ蛇の毒から精製したレクチンについて、全一次構造を決定したところ、これはカルシウム非依存性レクチン・ファミリ-の一員ではなく、もう一つの動物レクチン・ファミリ-である、カルシウム依存型レクチンの一員であることが明らかになった。
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