1)ニワトリ14K及び16Kレクチンについて、遺伝子のクロ-ン化を行い、その構造を解明した。また、遺伝子組替え技術により、大腸菌にて発現させることが可能になった。これにより、基磯及び応用のさまざまな研究において、充分な量の蛋白質を実験に供せられるようになった。 2)14Kと16Kの2つのイソレクチンの役割分担については未知な点が多いが、特異的抗体及びDNAプロ-ブを用いて、胚発生に伴うこれらレクチンのmRNAの転写と、蛋白質の発現を、時期及び臓器別に詳細に検討した。結果は複雑で、まだ首尾一環して解釈できる段階ではないが、発生の早い段階では16Kが働き、より遅い段階で14Kが働く傾向がみられた。 3)ニワトリ胚表皮内における14Kレクチンの局在を免疫細胞化学的手法により光顕的並びに電顕的に追究し、in vitro系におけるその分布パタ-ンが、EGF、DMSO、またはVA投与により変化することを確認した。 4)ニワトリ14Kレクチンの遺伝子発現は、スルホン化したcDNAを用い、in situ hybridization法にて検討すると、未分化な13日胚表皮では弱く、15、17、20日胚表皮の中間層の細胞全体にびまん性に強く認められ、角化の進行に伴い発現が増強した。さらに、vitaminA投与により角化を抑制した表皮では、発現はほとんど認められなかった。 5)ヒト高分子型のレクチンである29Kレクチンについて、cDNAのクロ-ニングに成功し、全一次構造が解明された。これは、14K型の2倍の分子量を持つが、C末端型の半分が14K型と高い相同性を示し、N末端側は全く関係のない構造をしていた。以上のような14K型及び29K型の一次構造研究を総合することにより、このレクチンファミリ-の分子進化を解明することができた。 6)ある種の蛇毒にβーガラクトシド結合性レクチンが存在することが知られていたが、我々が従来から研究してきたレクチン(カルシウム非依存性)と関連があるのかどうか明かでなかった。ガラガラ蛇の毒から精製したレクチンについて、全一次構造を決定したところ、これはカルシウム非依存性レクチン・ファミリ-の一員ではなく、もう一つの動物レクチン・ファミリ-である、カルシウム依存型レクチンの一員であることが明らかになった。
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