マスト細胞欠損マウスと培養マスト細胞を利用したマスト細胞機能解析システムの開発

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63870018
• 研究種目: 試験研究
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 北村 幸彦 大阪大学, 医学部, 教授 (70028520)
• 研究分担者: 浅井 秀一 静岡実験動物研究所春野支所, 所長 ; 松田 浩珍 大阪府立大学, 農学部, 助手 (80145820) ; 仲野 徹 大阪大学, 医学部, 助手 (00172370) ; 金倉 譲 大阪大学, 医学部, 助手 (20177489) ; 藤田 潤 大阪大学, 医学部, 助教授 (50173430)
• キーワード: マスト細胞 / ダニの排除 / 免疫グロブリンE / 即時型アレルギー反応 / サブスタンスP / 好酸球の侵潤 / マスト細胞の脱顆粒

研究概要

静岡県実験動物研究所で生産したW/W^Vマウスと正常対照の+/+マウスを大阪大学医学部と大阪府立大学農学部へ送り以下の実験を行った。1)W/W^Vマウスと+/+マウスの背部にダニを感染させると+/+マウスでは排除がおこるのにW/W^Vマウスではおこらない。しかしW/W^Vマウスでも、あらかじめダニの感染部位に培養マスト細胞を注射しておくと、その場所ではダニが排除されるようになる。このダニの排除にIgEが関与しているかどうかしらべるため、ダニを2回感染させたW/W^Vマウスより血清を採取し、あらかじめ培養マスト細胞を背部皮下に注射したW/W^Vマウスの静脈内に注射した。免疫血清を注射した場合はマスト細胞の出現している部分でダニの排除がおこったが、無処置のW/W^Vマウスから採取した対照血清を注射した場合にはダニの排除はおこらなかった。また免疫血清を熱することによりIgEを不活性化すると、免疫血清を注射する効果は失われた。つまりダニの排除にはマスト細胞とIgEが必須であることがわかったわけであり、即時型アレルギー反応の生理学的意義の一端を示したものと考える。2)サブスタンスPは神経伝達物質の1種である。サブスタンスPを皮内に注射すると、注射部位に多核球の侵潤がおこるが、この現象にマスト細胞が関与しているかどうか不明であった。そこでW/W^Vマウスと+/+マウスの皮下に空気を注射して気室をつくり、気室内にサブスタンスPを注入した。+/+マウスでは好酸球の侵潤がみられたが、W/W^Vマウスではみられなかった。しかしW/W^Vマウスの皮膚にあらかじめ培養マスト細胞を注射しておくと、好酸球浸潤がおこるようになり、サブスタンスPによる好酸球侵潤の誘導にはマスト細胞が関与していることが明らかになった。3)脱顆粒したマスト細胞をW/W^Vマウスの皮内に注射することにより脱顆粒後もマスト細胞に増殖力があることを示した。

研究成果

• [文献書誌] Fujita,J.: Journal of Cellular Physiology. 134. 78-84 (1988)
• [文献書誌] Kanakura,Y.: Blood. 71. 573-580 (1988)
• [文献書誌] Kanakura,Y.: Blood. 72. 877-885 (1988)
• [文献書誌] Jujita,J.: Blood. 72. 463-468 (1988)
• [文献書誌] Matsuda,H.: Journal of Immunology.
• [文献書誌] Kitamura,Y.: Annual Review of Immunology.
• [文献書誌] Kitamura,Y.: "Ontogeny of mast cells.In The Immunology of Fetus." CRC Press,
• [文献書誌] Kitamura,Y.: "Mechanisms of mast cell defficiency in mutant mice of W/W^V and S1/S1 genotypes.In Mast Cell and Basophil Differentiation and Function in Health and Disease." Raven Press,