顕微鏡レベルであれ、肉眼的観察のレベルであれ、およそ形態学的な情報は、三次元的な構造のなかで、はじめて完全に把握できるようなものである。しかし、これまでの病理組織学は、すべて薄い切片のなかに見られる二次元的な形態の枠を出ることはむつかしかった。これを突破しようとすれば、多大の労苦を注入して連続切片をつくりそれを再構築して三次元イメ-ジを再現するようなものに止っていた。しかし、これとても、血管網や腺の不規則分岐あるいは細く入り組んだ構造の三次元的な像を再構築するには全く不適であった。 本研究では、共焦点顕微鏡を用いるマイクロトモグラフィ-法を導入することによって、半自動的に三次元観察を行いうる共焦点レ-ザ顕微鏡を開発することに焦点をあわせた。共焦点レ-ザ走査顕微鏡は、コンフォ-カル光学系と、その入力系が取り込む光学情報を処理して三次元的イメ-ジとして加工し、コンピュ-タグラフィックスに出力する画像処理系の2つの融合によってはじめて実用になる。 本年度は、後者のステップを格段と進歩させ、実用にあたえる三次元画像を高速に出力するための高速画像処理システムを導入し、前年度に完成したコンフォ-カル入力系と結合し、ソフトウェアを改良してステレオグラムや動画を半自動的に作りだすシステムとすることに成功した。 また、対象となる標本の処理法を広く様々の染色法を試めすことにより調査を進めてきたが、DNAのためのプロピジウムアイオダイドや抗体標識のためのフルオレッセンイソチアネ-トなどの蛍光染色の他に、病理学で広く用いられるエオジン染色が、アルゴンレ-ザの488nmの光によって効率よく、かつ仲々退色しないで励起される蛍光染色として使用できることがわかった。今後はエオジン染色をした病理標本を、三次元的観察に利用する方法についても更に研究を進めたいと考える。
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