研究概要 |
組織形態学における真の情報は、細胞のレベルであれ、組織構築のレベルであれ、三次元的な構造の中に含まれている。しかし、これまでの顕微鏡的形態学は切片のなかにみられる二次元的な情報に制限されていた。癌組織の腺管構造の三次元的な異型や核の形,核DNAの三次元的な分布の異常など癌の診断に必須であるが、これらはいずれも二次元の分布から推量されているだけであった。また、これまで三次元を見る方法として利用されてきた標本を傾けて2枚のステレオグラムを撮る方法などは見かけの三次元効果はもつものの、三次元に分布する物質の定量的把握という面からみると、内部の情報を伝える能力は全くないものであった。癌のみならず、生体変化を三次元的かつ定量的な手段で捉えれば今まで知られていなかった新しい局面が展開するものと期待される。 本研究は、この目的を実現するための顕微鏡的トモグラフィ-を高解像度かつ定量的に実行できる共焦点レ-ザ顕微鏡システムをつくりあげることを目的として着手された。この目的のため、まず蛍光測光のトモグラフィ-における定量性を明らかにする必要があった。昭和63年度からの研究を踏まえ、半自働にトモグラフィ-のピクセル光量を加算するソフトウェアを完成し、多くの人体材料について測定を行い、このシステム(ハ-ドウェアとソフトウェア)の有効性を明らかにした。ついで、本システムを発生期にある神経管に応用し、その蛍光トモグラフィ-をとることによって、細胞内機能分子の微細分布を定量的に明らかにすることに成功した。これは生化学・分子生物学的手法では解決できなかった三次元分布測定の重要性を実例をもって明らかにするものであった。しかし、現在、この研究で完成したシステムは予想されたトモグラフィ-を実現し、研究としては成功したとはいえ、同時に多くの改良すべき点を指摘する結果となった。開発の更なる努力が要望される。
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