研究課題
ヒト膵癌には、正常膵とは異なる膵癌特異抗原、あるいはγーGTPの存在することが判明しているが、これらの抗原に特異的なモノクローナル抗体を作製し、それを血中レベルで測定するシステムを開発して膵癌の集団検診に利用するのが本研究の目的である。そこで先ず、剖検により入手した正常膵、膵癌組織および教室にて樹立されたヒト膵癌株化細胞のホモジネートを37℃、1時間ブロメリンで処理し、10^5×g30分遠心後の上清を粗γーGTP分画として得る。これらから陰イオン交換体、ゲル濾過、分離用等電点カラムを用いてsialic acid-rich typeとsialic acid-poor typeの2種類の正常膵γーGTPと膵癌由来γーGTPを分離精製する。ついでBalb/cマウスにこれらのγーGTPを免疫し、血清中に抗γーGTP抗体が作られているのを確認してから、その脾細胞と骨髄腫株との細胞融合を行った。また一方、膵癌株化細胞をBalb/cマウスに免疫し、その脾細胞を用いてハイブリドーマの作製も行っている。また将来、地域における膵癌集団検診の実施を予定しているため、地域における成人病の集団検診の際に同時に血清を収集中である。そしてすでに実用化されている腫瘍マーカーであるCEA、DuーPan2、NCCーST439、KM01を成人2945人の血清を用いて測定した。異常者は4項目とも約3%の頻度で、4項目のうち1項目以上異常者は全体の約10%、複数項目の異常者は1.36%であり、各項目間の相関は小さくそれぞれが独立した検査項目と考えられた。今後、膵癌の集団検診にこれら腫瘍マーカーを応用するには、要精検率が高くならない程度に複数のマーカーを組み合わせて測定する必要があると思われた。
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