ヒト黒色腫のメラニン代謝活性親和性Bー10化合物による選択的熱中性子捕捉療法

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63870042
• 研究種目: 試験研究
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 三島 豊 神戸大学, 医学部, 教授 (10073743)
• 研究分担者: 河野 通雄 神戸大学, 医学部, 教授 (60030938) ; 森 芳弘 信州大学, 理学部, 教授 (40020648) ; 野崎 徹也 武蔵工業大学, 原子力研究所, 助教授 (60139409) ; 神田 啓治 京都大学, 原子炉実験所, 助教授 (10027419) ; 市橋 正光 神戸大学, 医学部, 助教授 (00030867)
• キーワード: 悪性黒色腫 / メラニン代謝 / 熱中性子捕捉療法 / 核磁気共鳴映像

研究概要

1.a)昭和62年度治療実施のヒト黒色腫第1症例(7月照射)は病巣治癒を得たが他の転移巣顕在化により翌5月死亡。この間増殖徴候はなく剖検時組織検査で治療病巣部に悪性細胞不存。b)外科的には切断以外に治療法のない深部に至る巨大転移巣を下肢にもつ第2症例は腫瘍残存するも顕著に縮小。現在生存。c)Stage工の足底原発巣(Acral Len tiginousおよびNodu-Lar melanomas)をもつ63年施行2症例は病巣完治し生存。d)上記全例記すべき副作用なし。e)^<10>BーBPAのfructose錯体又はcyclodextrin包接化合物を用いた中性pHでの経口投与法の有効・安全性を黒色腫担癌小動物と一部ヒト患者でのデータで確認。2.メラニン生成活性の高いAと低いB,Cの培養ヒト黒色腫細胞3株を樹立。^<10>B-BPA処理、熱中性子照射。Aは低照株Bー16より致死高くB,Cは低い。3.京大原子炉一年間稼動停止のため実験的研究を中断、体液の重水置換による深部照射効果につき理論計算を進めた。4.武工大炉照射場の中性子とγ線の線量分布を詳細に測定し、足裏などの限られた部位については照射条件改善の余地を発見。5.京大炉に不調発生、その対策に追われて予定進行せず、平成元年度は修復・稼動の見込み。6.^<10>B-BPA懸濁液を3g/kg用量で雌雄ラット70匹ずつに経口投与。全例2週間生存(LD_<50>>3g/kg)。投与後の体重、臓器重量は対照ラットと有意差なし。7.a)ヒトに皮下(又は経口)投与したBPA-fructose錯体のホウ素分析により、その皮内残留性小、腫瘍内集積性大を証明。b)予備実験の結果、sorbitol錯体の有用性に想到。8.黒色腫のMRI所見を、T_1強調像とT_2強調像のintensitiesを指標として把握し、得られた知見をメラニンによる常磁性体効果、腫瘍の組織性状の変化と関連させて考察・整理中。9.速中性子線治療で皮膚悪性黒色腫は22例中21例治癒(内17例は手術併用)、頭頚部悪性黒色腫では18例中50%治癒。b)速中性子線による皮膚の名目的標準線量NSDを求めた。

研究成果

• [文献書誌] Mishima,Y.: Pigment Cell Res.Suppl.1. 61-68 (1988)
• [文献書誌] Mishima,Y.: Pigment Cell Res.(Alan R.Liss,Inc.,New York). 2. (1989)
• [文献書誌] 市橋正光: 神緑会学術誌(神戸大学医学部). 4. 86-96 (1988)
• [文献書誌] Matsumoto,T.: Phys.Med.Biol.33. 427-435 (1988)
• [文献書誌] Tsumemoto,H.: Strahlentherapie und Onkologie. 1. (1989)
• [文献書誌] Mishima,Y.: "Neutron Capture Therapy(Selective thermal neutron capture therapy and diagnosis of malignant melanoma:from basic studies to first clinical treatment.)" Plenum Publishing Corporation,New York, (1989)
• [文献書誌] Mishima,Y.: "'Neutron Capture Therapy of Tumors'in the"Recent Results in Cancer Research"Series(First successful treatment of human primary melanoma by single selective thermal neutron Capture" Springer-Verlag,Berlin, (1989)