研究概要 |
膝関節靭帯損傷診断は主として従手検査あるいはその際のX線像によって判断され厳密で客観的指標に乏しいことが本研究に着手する動機であった。しかし既製の診断装置が皆無ではなくニ-ア-スロメ-タ-の名の下に発売されておりかなり広範に使用されている。ところがこの装置も従手である一定と思われる力を加え,その際の変位量を健血と比較して判断するもので信頼性が高いとは言い難い。 我々は1988年〜1989年において多関節ロボットの応用により客観的測定を可能にする方法を追求してきた。しかし従来の装置ではくり返し試験でのデ-タ-のばらつきがみられる難点があった。これは軟部組織を介しての力の伝達であるため,軟部組織の変形を偏位としてとらえることにあった。また偏位の測定をgap rersonで行ってきたが,これは比較的大きな距離間では不正確であるため,レ-ザ-ビ-ムによる測定に変更した。軟部組織変形の問題は固定装置の改良により対処した。 改良装置による健常人膝の前後方向のstiffness測定では6kgfの力では前方向で2.85±0.78(10^4μ/m)で後方向では3.36±0.86(10^4μ/m)であり,8kgfの力では前方向で2.85±0.85(10^4μ/m),後方向で4.09±1.25(10^4μ/m)であった。 一方前,後十字靭帯断裂例ではすべての例で1×10^4μ/m以下を示した。以上の結果より極めて鋭敏に旦つ客観的に靭帯損傷を検出し得る装置を開発することが出来た。この装置により健常膝における年代毎の靭帯stiffnessの推移の有無,スポ-ツ後の靭帯stiffnessの変化をとらえることが可能であろうと考えている。
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