研究課題/領域番号 |
63870063
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山本 悌司 東北大学, 医学部, 助教授 (10106487)
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研究分担者 |
兼子 忠延 東北大学, 医学部, 講師 (10091670)
岩崎 祐三 東北大学, 医学部, 教授 (00142927)
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キーワード | 軸索流 / 知覚神経 / 疼痛 / アドリアマイシン |
研究概要 |
知覚神経末梢から薬剤を注入し、逆行性軸索流を利用して、注入末梢神経を支配している知覚神経細胞のみに薬剤を取り込ませ、変性、破壊させ、それによって疼痛の治療に役立てようとするのが本研究の目的である。本年度、アドリアマイシン(ADM)、ネオカルチノスタチン(NCZ)、ピュロマイシン(PU)、プレオマイシン(B2)の逆行性軸索流による知覚神経節破壊の程度をネコ、ラットを用いて検索した。その結果ADMは最もすみやか、かつ限局性に知覚神経節破壊を示し、その中枢性のワーラー変性も注入末梢神経の受容野に一致していた。1〜2%濃度で充分と考えられた。NCZは変性がADN程著明でなく、かつニューロンの変性程度に比較して衛生細胞の反応が強かった。PUは知覚神経節細胞の変性はすみやかであったが、治療薬剤ではない難点がある。B2では知覚神経細胞の変性は、10%と高濃度でなければ惹起し得なかった。以上から、1〜2%濃度ADMが知覚神経節を逆行性軸索流によって破壊、変性させるためには最も適した薬剤であることが判明した。ADMでは24〜48時間で三又神経短潜時活発電位(TSEP)は消失し、3ケ月後まで回復は見られなかった。一方、混合神経(坐骨神経)への注入では、ADMは脊髄運動ニューロンの変性も来すことが判明した。その為、純粋に知覚神経細胞のみを選択的に変性させる薬剤ではないという難点が残った。また、皮膚に対する影響は1〜2%濃度では瘢痕を残さずに、数ケ月で治癒することが判った。以上から、ADMが、現時点では最適の薬剤であり、次年度には、その安全性の確認と、臨床応用への適応について検討してゆきたい。
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