研究課題/領域番号 |
63870063
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
山本 悌司 福島県立医科大学, 教授 (10106487)
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研究分担者 |
兼子 忠延 東北大学, 医学部, 講師
岩崎 裕三 東北大学, 医学部, 教授
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キーワード | 神経痛 / 軸索流 / アドリアマイシン / 除痛法 |
研究概要 |
前年度、逆行性軸索流による知覚神経破壊に最も適した薬剤を検討してみた。その結果、ブレオマイシン、ミトラマイシン、毒性レクチン類(RCA、やどりホレクチン)の中で、アドリアマイシンが最も効果的に軸索内輸送され、知覚神経節細胞を変性させることが判明した。そのため、本年は本例の臨床的有効性を、厳密に選択した3例に施行し、その効果を検討することを主眼にした。その実施のために、ネコを用い、アドリアマイシン(ADM)の至通濃度を比較検討したところ、1〜2%濃度で充分に目的を達せられることが判った。臨床第1例は三又神経第三枝(オトガイ神経領域)の帯状ヘルペス後神経痛に悩む症例であった。直視下にオトガイ神経を露出し、マイクロ注射で1%ADMを約20μl神経鞘内に注射した。薬剤も無効であった疼痛は翌日には消失し、オトガイ神経支配領域の知覚消失を認めた。第2例はやはり帯状ヘルペス後の肋間神経痛であり、その領域は一分節のみではなく、数分節に及ぶものと思われた。手術的に肋間神経を2分節露出し、1%ADMを注射した。その分節の知覚低下が証明されたが、疼痛の軽減度は主観的評価では50%程度とのことであった。第3例目は三又神経痛(第2技領域)に対して各種薬剤、ブロックを施行するも、無効の症例であった。下眼窩神経を手術的に露出し、直視下に1%ADMを注射した。その領域の知覚低下と、疼痛の著明な低下(約70%)を認めた。以上の3例は、適応を厳密に選択して施行したが、疼痛の改善は100-50%と、症例によってかなり差が認められた。しかし、適応の厳選、手技の向上によって、本法は神経痛法の疼痛の治療法として、安全かつ容易な除痛法として臨床応用の段階に至ったと結論できる。
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